陥入爪と巻き爪の治療

まず・・・年に数回問い合わせのある”ツメフラ法”、やっと何かわかりました。

当院では今のところツメフラ法を導入する予定はありません。よさそうな方法だと思いますが、医療用具承認番号が取られていないこと、医学中央雑誌(日本の医学論文を網羅したリスト)にこの方法に関する論文が全く見当たらない(私の調べ方が悪いはずがありません。ツメフラ法でも、発明者の名前でもひっかかってこない・・・)ことがその理由です。いくらよい方法でも、ヒトの体に使う以上、せめてどちらか、が最低条件だと、私は考えます。(第28回臨床整形外科学会、第373回日本皮膚科学会秋田地方会で発表があったことは確認できましたが、発表だけでは善し悪しの調べようがありません。)

さて・・・

足の爪のトラブルで、最も患者さんを困らせているのは陥入爪巻き爪でしょう。陥入爪と巻き爪別の異常ですが、よく混同されます。痛い事には変わりが無いからです。しかし、適切な治療法の選択には、爪の異常に対する正しい理解が必要です。

陥入爪は爪の形はそれほど悪い訳ではなく、爪の切りすぎが主な原因で爪の縁が皮膚に食い込んだ(あるいは刺さった)状態。一種のケガです。足指の両脇が痛むのが特徴です。

巻き爪は、かかとの高い靴や形が足に合っていない靴を無理に履いて、爪を作る細胞に長年にわたって負担をかけたり、足先に体重を掛けない歩き方が原因で、爪の曲がりがきつくなってしまった状態を言います。この曲がりは、必ず根元は緩く、先に行くに従ってきつくなっています。足指の先端をはじかれると痛むのが特徴です。

両方の異常がかぶっている場合もあります。

爪のことをよく解っていない医者にかかると、爪の両脇を切って抜かれたり、先端を斜めに切られたりすることがほとんどですが、これだとまず間違いなくぶり返してしまいます。

以前は、陥入爪と巻き爪の治療は、手術が主体で、陥入爪に対しては、食い込んでいる部分の爪を、根っこを含めて切り取って縫う方法が多用されましたが、爪を作る細胞の取り残しが結構あって、とげ状の爪が爪の縁から生えてくる後遺症がよく見られました。もちろん切って縫う訳ですから、傷がしっかりくっつくまで長い安静期間が必要でした。

また巻き爪は、一度爪を抜いて、爪の下の皮膚を骨からはがし、出っ張った骨を削って、はがした皮膚を元に戻す方法くらいしかありませんでした。はがした皮膚がしっかりくっつくまで、長い安静期間が必要でしたし、爪が元の長さに戻るまでずいぶん時間がかりました。一度爪をはがすと、爪を作る細胞はどうしても傷つきますから、次に生えてくる爪は確かに巻いてはいませんが、分厚くなったり、生えるスピードが遅くなったりと、決して満足できる結果が得られるとは限りませんでした。

私は、既に強い炎症を起こしてしまっている陥入爪に対しては、爪の幅が狭くなって構わない人に対しては、フェノール法を好んで用います。食い込んでいる部分の爪を必要最小限度で短冊状に切って抜き、わずかに希釈した液状フェノールを染ませた細い綿棒を使って、爪を作る細胞を腐食し、トラブルの元になっている爪の部分だけ、永久に生えなくする方法です。どんなにひどい炎症を起こしていても、すぐに出来て、歩いて帰れます

軽い炎症程度であれば、爪に穴を開ける余地があれば、超弾性ワイヤーをかけて、ワイヤーの曲げに対する復元力で爪の食い込みを和らげ、爪を切り過ぎている場合はプラスチック(光硬化樹脂・アクリル樹脂)で人工の爪を作る方法を併用して、食い込みを解消します。

巻き爪は、機械で爪を削るだけで痛みが取れる場合がほとんどです。これもちょっとしたコツなんです。痛みが取れれば、爪ヤスリを使った削り方をきちんと伝授して、治療はそれで終了です。

爪の削り方だけで痛みが取れない場合、VHO(3TO)矯正法や、超弾性ワイヤー矯正法を使い分けます。

VHO(3TO)矯正法は、なるべく爪の曲がりの緩い根元に近い両方の縁に、ステンレス製の特殊な形状の針金を、個々の爪に合わせてその場で加工したフックを引っかけ、それらのフックに第3のワイヤーをリング状にかけて、巻きが緩い状態で固定し、緩い巻きのまま爪が伸びるようにしてやる結果として、巻き爪を矯正する方法です。

決して力任せに無理やり形を変える方法ではありません。だから、第1回目の矯正が完成するのは、爪が伸びて爪の両端に引っかけたフックが先端まで移動する半年後ですが、痛みは即座に取れます。途中VHO付け外しや通院の必要はありません。痛みを取る、と言う最終目的のため、形の矯正を即座に完成させる必要は無いのです。

私はフス・ウント・シュー・インスティテュートのトレーニングを受け、ライセンスを取得して施術しています。現在では数々の他社製品が出回り、トレーニングを受けることなく施術が可能です。ただ、針金の加工には、工作のセンスが要求されますので、術者によって明らかに上手下手があります。私はプラモデルの全国大会で、銀賞受賞歴のある、ばりばりのモデラーですから、工作技術は完璧です。安心して任せて下さい。工作の実力は、室蘭プラモ愛好会のホームページ、”Dr.Dの不思議な世界”をごらんあれ。全部私の作品です!

なお、VHO矯正法や、超弾性ワイヤー矯正法、人工爪(光硬化樹脂・アクリル樹脂)による治療法は私費診療です。たとえ病気、ケガの治療目的であっても、厚生労働省の定める料金表に掲載されていない治療法は、私費診療として保険診療と区別せざるを得ません。保険診療との併用も法律によって禁止されています(保険診療との併用は混合診療と呼ばれ、最高裁判決で禁止が確定しました。)。決してお金儲け目的ではない事をご理解ください。また、手術が必要になるまでこじらせた場合に比べ、これらの方法で解決できるうちに来て頂いた方が、治療完了までに支払う実際の金額が安く済むことが多いので、そういう意味でも早めの受診をおすすめします。

また、陥入爪は刺さっている爪自体が原因のケガですから、もう刺さらない様にしてやれば再発しませんが、巻き爪は、前述の様に、原因を取り去ることが出来ませんから、矯正を止めると遅かれが早かれ再発します。矯正方法の優劣の問題ではありません。だから、巻き爪の矯正は、最初に取り付けたVHO(3TO)の交換時期に、痛みさえ取れていれば、継続して矯正をお勧めすることはありません。また痛くなったらやればよいだけです。VHOを取り外して3か月以内にまた痛くなったら初診料は頂きませんし、取り外したフックは患者さんに持ち帰って頂き、可能な限り再利用しています。連続して無意味な矯正を続ける方法より遙かに経済的です。